大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和35(あ)2585 決定

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

被告人A、同Bの弁護人佐々木哲蔵の各上告趣意について。

所論は、それぞれ単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張を出でないもので

あつて、いずれも適法な上告理由に当らない。(論旨は、本件は放火の既遂ではな

く、未遂に止まるものと主張するが、原判決は、挙示の証拠により本件放火現場附

近のC方浴場南東すなわち炊事場北東の約八糎角の柱(浴場と炊事場との仕切りの

柱)及び該柱に第一審判決判示の倉庫との間に張り付けられた幅約二一糎の板壁の

各上部約一六〇糎の部分が燻焼の程度を超えて焼燬されたことを認定、判示してお

り、右はいわゆる独立燃焼の状態に達したものと認めるのを相当とする。また、論

旨は、原判決の是認する第一審判決は、被告人らの本件所為につき、確定的故意、

未必的故意のいずれであつたかを明示していない違法があり、もし、確定的故意の

存在したことを判示する趣旨とすれば、これを認めるに足る証拠は存しないから、

証拠に基づかないで事実を認定した違法があると主張するけれども、故意による犯

罪事実を判示するには、故意の態様をも明示すべきであるとの法律上の根拠はない

し、また第一審判決挙示の証拠によれば、被告人らにおいていずれも本件焼燬の結

果につき認識を有していたことを肯認するに十分である。所論の如き事実誤認乃至

法令違反のかどは存しないものというべきである。)

被告人Dの弁護人和島岩吉の上告趣意について。

第一点は事実誤認の主張であり、第二点は事実誤認並びに量刑不当の主張であつ

て、いずれも適法な上告理由に当らない。

被告人Eの弁護人瀬戸藤太郎の上告趣意について。

第一点は事実誤認、第二点は単なる法令違反、第三点は単なる法令違反並びに量

- 1 -

刑不当の各主張であつて、いずれも適法な上告理由に当らない。

同被告人の弁護人一松定吉、同柏木薫の上告趣意について。

第一、二点は、いずれも事実誤認、単なる法令違反の主張であり、第三点は、事

実誤認、量刑不当の主張であつて、すべて適法な上告理由に当らない。

被告人Fの弁護人江橋活郎、同小林直人の上告趣意(上告趣意補充申立書(その

一)を含む。)について。

第一点は、事実誤認、量刑不当の主張であり、第二点は、単なる法令違反の主張

であつて、いずれも適法な上告理由に当らない。

なお、被告人Eの弁護人一松定吉、同柏木薫の上告趣意補充書、被告人Eの弁護

人伊藤秋雄の上告趣意書、被告人Fの弁護人江橋活郎、同小林直人の上告趣意補充

申立書(その二)は、いずれも上告趣意書の指定提出期限後の提出にかかるので、

判断を加えない。

また各被告人につき記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められ

ない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお

り決定する。

昭和三七年五月一八日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!